2015年 12月 26日
2015年12月25日 郵便局 |
昼下がり。家を出て郵便局へ向かう。信号を待つ。
年末とはいえ、まだ平日の昼間は街がおばあちゃんたちのもの。あっちをみてもおばあちゃん、こっちをみてもおばあちゃん。ときどき、ちびっことお母さん。
お父さんを見かけないのはお仕事だからだとして、あんまりおじいちゃんを見かけないのはなぜだろう。将棋か?
と、いったふうな感じで郵便局へ到着。
カウンターで“番号札”をもらう。47番。
45番で呼ばれたおばあちゃんが、さっそうと隣のカウンターに現れる。
おばあちゃん「年賀状がいるんだけどね」
局員「絵柄入りだと、これとこれと、あとは無地のものがありますが」
ば「どれどれ、絵柄の見せて」
局「こっちは猿で、こっちはトトロですね」
ば「じゃあトトロ見せて」
局「いかがでしょう」
ば「んー、じゃあそっちの猿のも見せて」
局「(にこにこ)」
ば「んー、ほかにはどんなのがあるの?」
局「あとは無地しかないですね」
ば「じゃあ無地見せて」
え、無地、見るんだ。
局員さんがしずしずと、真っ白なハガキをおばあちゃんに差し出す。
おばあちゃん、無地を見る。
ば「んー、なるほどね」
そのなーんにも書いてない白い平面に、おばあちゃんはいったい何を見てるんだろう、この感じ、何かに似てる。ジョン・ケージだ。
ジョン・ケージの『4分33秒』が郵便局じゅうに響き渡っているみたい。
大音量で、かつ、僕にしか聞こえないボリュームで。
あるいは、
じっと動かずハガキ(無地)を鑑賞するそのおばあちゃんは、『4分33秒』を踊っている、とも取れる。
なんだか世田谷の平和な昼下がりらしからぬ雰囲気になってきたところで、ちびっこが泣く。
待て、ちびっこ。いま、いいところ。
でも静けさは崩れてしまう。
ば「……なんにも書いてないね」
それを聞いてなんだか安心する。
「47番でお待ちのかたー」
一度静けさが去ると、おばあちゃんは小銭をじゃらじゃら落とすわ、ちびっこは本格的に泣き出すわで、てんやわんや。
さっきからずっとこんなにうるさかったような気もだんだんしてくる。
「47番でお待ちのかたー」
はっ、47番は僕のばんご
「48番でお待ちのかたー」
間に合わなかった。
年末とはいえ、まだ平日の昼間は街がおばあちゃんたちのもの。あっちをみてもおばあちゃん、こっちをみてもおばあちゃん。ときどき、ちびっことお母さん。
お父さんを見かけないのはお仕事だからだとして、あんまりおじいちゃんを見かけないのはなぜだろう。将棋か?
と、いったふうな感じで郵便局へ到着。
カウンターで“番号札”をもらう。47番。
45番で呼ばれたおばあちゃんが、さっそうと隣のカウンターに現れる。
おばあちゃん「年賀状がいるんだけどね」
局員「絵柄入りだと、これとこれと、あとは無地のものがありますが」
ば「どれどれ、絵柄の見せて」
局「こっちは猿で、こっちはトトロですね」
ば「じゃあトトロ見せて」
局「いかがでしょう」
ば「んー、じゃあそっちの猿のも見せて」
局「(にこにこ)」
ば「んー、ほかにはどんなのがあるの?」
局「あとは無地しかないですね」
ば「じゃあ無地見せて」
え、無地、見るんだ。
局員さんがしずしずと、真っ白なハガキをおばあちゃんに差し出す。
おばあちゃん、無地を見る。
ば「んー、なるほどね」
そのなーんにも書いてない白い平面に、おばあちゃんはいったい何を見てるんだろう、この感じ、何かに似てる。ジョン・ケージだ。
ジョン・ケージの『4分33秒』が郵便局じゅうに響き渡っているみたい。
大音量で、かつ、僕にしか聞こえないボリュームで。
あるいは、
じっと動かずハガキ(無地)を鑑賞するそのおばあちゃんは、『4分33秒』を踊っている、とも取れる。
なんだか世田谷の平和な昼下がりらしからぬ雰囲気になってきたところで、ちびっこが泣く。
待て、ちびっこ。いま、いいところ。
でも静けさは崩れてしまう。
ば「……なんにも書いてないね」
それを聞いてなんだか安心する。
「47番でお待ちのかたー」
一度静けさが去ると、おばあちゃんは小銭をじゃらじゃら落とすわ、ちびっこは本格的に泣き出すわで、てんやわんや。
さっきからずっとこんなにうるさかったような気もだんだんしてくる。
「47番でお待ちのかたー」
はっ、47番は僕のばんご
「48番でお待ちのかたー」
間に合わなかった。
by amadatasuku
| 2015-12-26 02:52