2011年 01月 06日
一富士 二たか 三たか 四たか |

司会「一富士 二たか 三たか 四たか。合計九たか獲得で、八王子市の中村さんファミリーの優勝です。おめでとうございます。」
中村父「ありがとうございます。やりました!」
司会「第二クウォーターからの猛烈な巻き返し、お見事でした。」
父「そうですね。なにしろ立ち上がり、第一クウォーターはわずか一富士にとどまってしまった反面、相手の岸本さんファミリーはいきなりの六なすびでしたから。もしあれがひとつでも富士だったらと思うと、いまでも背筋がぞっとする思いです。」
太郎「父ちゃん、今日はツイてるって、だからここから一気に攻めていこうって、言ってたんだ。」
司会「なるほど。相手のミスを誘う戦い方、これもまた勝因のひとつだったわけですね。」
父「いやはや。」
太郎「いやはや。」
司会「さてお母さん。お母さんとしてはこの勝負、どんな風にご覧になりました。」
母「はい。ええまあ、私にできることといったらその、私は直接参加することができないわけですから、夫や子供がリラックスして望めるように、出来るかぎりふかふかの布団を用意したつもりです。」
司会「たしかに中村さんファミリーのお布団、こちらは今大会通してみても、群を抜いてふかふかに見えるといった声が、全国の視聴者の皆さんからも寄せられています。お母さんこちら、中綿にはどんな綿を。」
母「いえ、実は綿ではないんです。」
司会「綿ではない?」
母「ええ。あのう、実家の方で捕れました、鳥の羽を。」
司会「と……とり」
観衆「うおーー」
司会「なるほどお母さん!これは、アイデアですね!」
母「いえ、そんな、ただのアヒルの羽ですから。」
司会「綿のかわりに、アヒルの羽をねえ。いやあ参った。まさに内助の功!おかげで家族はぐっすりすやすや、いい夢も見られるというわけだ!」
父「私の自慢の妻です。」
太郎「まったく父ちゃんは調子がいいや。」
司会「しかしおかげでその後、第三、第四クウォーターと、回を追うごとにたかの夢を量産していったわけですが、このときにはもう、富士の夢は狙っていなかった。」
父「はい。なにしろふかふかでしたから、ひと夢ひと夢着実に、たくさん眠ることができると思ったんです。ならば手堅いほうがいいだろうと。」
司会「最愛の妻への信頼がなしえた、安定した眠り!これこそ夫婦の鑑!太郎くんもがんばったね!そして残念ながら丸裸にされてしまった実家のアヒルたちにも、今いちど大きな拍手を!」
観衆「うおおーー」
見上げればうっすら明けかけた空。スタジアムに集まった多くの人々の鳴り止まぬ拍手。
市民は”戦後復興”という言葉も忘れて久しく、これからいよいよバブル期へと向かっていこうとする激動の日本の片隅で、こうして羽毛布団はうまれました。
その日スタジアムに集まった人々の、そしてお茶の間でテレビを見ていた人々の口からその噂は急速に広がり、羽毛布団はあっというまに、冬の寝室にはかかせない一枚となっていったのです。
中村ファミリーの実家のあった八王子市には今でも、世界で一番最初の羽毛布団になってしまったあわれなアヒルたちの銅像が残され、市民の待ち合わせ場所とかになっています。
<<試合結果>>
中村ファミリー 1富士 9たか
岸本ファミリー 2たか 8なすび
by amadatasuku
| 2011-01-06 23:59

