2008年 12月 03日
かもめとようこそ |
オーロラソースは、さっきまでケチャップとマヨネーズだった両者が、手と手をとり合ってひとつになることで、なんの変哲もない隣人だと認識していた人が突然思いもよらぬ魅力を振りまいて僕らをおののかせてしまうような、言うなれば高校デビューを飾った幼なじみような甘酸っぱい魅力と味を持つ特別なソースであり、実際の空に浮かぶ美しいオーロラと比較したらそもそもなんでこのソースにオーロラなんていう名前がついているのかという疑問も持ち上がるのだけど、ま、とにかくすごいのよ、という意味でならオーロラという命名も納得といえば納得で、名に恥じない活躍をしてきておくれ、と息子を送り出す名家の婦人のような気持ちとは裏腹に心の奥底からふつふつと湧き上がる憎しみ、怒り、そして殺意、ドロドロに溶解したその憎悪を、一振りの名刀のように熱しては鍛え、熱しては鍛えたこの体、いまこそさらわれたお姫様を助けるべく、海を渡り、砂漠を抜け林を抜け、しなやかな木立をかき分けかき分け、山々を昇り昇り、降り降り、道をまちがえまちがえ、いやはや、まいったまいった、汗をふきふき、やっと見つけた喫茶店で頼んだナポリタンにはサラダとは名ばかりのキャベツの千切りがついていて、ま、サラダの名に恥じないようにがんばりたまえ、と、名家の主人のようなおももちでマヨネーズをどばどばとかけると、それをナポリタンと交互に口へ運ぶうち、おっとこれは何かの味だ、と思い出したるは、ケチャップとマヨネーズのシンプルで複雑な融合、そう、それはオーロラソース。
by amadatasuku
| 2008-12-03 23:59