2013年 04月 06日
クリーニング屋さんの大盤振る舞い |
商店街の肉屋さんでからあげを買う。すんませーん、からあげください。
こうした言葉(「これください属」と分類したい)を言うチャンスは、思えば少ない。なかなかうきうきする台詞なんだけど。
店舗が大きくなると、商品をつかんでレジに持っていけば事足りる。「これください」は口に出して言えなくて、これください風の気持ちになるだけでやがて消える。うきうきは半減だ。
おじちゃんがからあげをトングでつまんで、パックにつめる。フタを閉じようとしたところで一瞬とまり、
ん。と言う。
そしてまたトングを手にさらにからあげをつまんで、どんどん大盛りに。なんかおじちゃん、笑ってる。
ハッ!「大盤振る舞い」だ!
小さなお店ではこうしてたまに、大盤振る舞いに出会える。
からあげのパック、輪ゴムをかけてもこれ、あふれてくるぞ。
大盤振る舞いの魅力は、たとえばからあげがたくさんもらえること自体だけではなくて、その大盤振る舞いの奥に、個人(おじちゃん)の「気分」が存在していることも。
顧客満足のために、とか、あるのかもしんないけど、やーでも、きっとないな!
おじちゃんは「気分」がいいから大盤振る舞いをするんだ。
そうかそうか、おじちゃん、気分がいいのか。
ええこっちゃ、ええこっちゃ。しかもからあげも増えたし。
いいことばっかりじゃないか!
大盤振る舞いおそるべしなのです。
帰路につきながら、商店街を見回しいろんなお店の大盤振る舞いを想像してみる。
八百屋さん。トマトをひとかご買ったら、みかん食べるか?とサービスだ。いいねえ。
魚屋さん。じゃあ、このアジをください(これください属)。あいよっ。で、なにくれるかなあ。アジ買ってブリがついてきたりしたら、なんか申し訳ないけど、でもいいねえ。
八百屋さんも魚屋さんも、気分がいいんだねえ。
床屋さんはどうだろう。いつもの感じで!あいよっ!でウトウトして起きてみたら店主が、
お客さん、実はね、明日息子がお嫁さんをもらってくるんですわ。なんだか気分がいいんでいつもより余計めに刈っておきやしたんで、ヘイ。
これはこまる。
床屋さんはぜひ平常心で。
じゃあクリーニング屋さんが大盤振る舞いをしたいときにはどうすればいいだろう。いつもより長めに洗濯機まわしときましたんで。いつもより熱めの設定でアイロンかけときましたんで。
結果に反映されにくい。
気分がよかったんでお客さんのシャツと一緒に自分のパンツも洗っちゃいましたよ、わっはっは。
楽しそうだけどもこちらの気分は悪くなる。
もし生まれ変わるなら、大盤振る舞いしやすい職業に就きたいものだと思った。
という話。
by amadatasuku
| 2013-04-06 19:51